ノーコードでサイトを作るツールの選び方 — 2013年に話題だったツールは、いま影も形もない

ノーコードでサイトを作るツールの選び方 — 2013年に話題だったツールは、いま影も形もない

ドラッグ&ドロップでサイトが作れるツールは山ほどあります。 「おすすめ12選」の記事も山ほどあります。この記事はそれをもう1本足すつもりはありません。

2013年ごろ、この分野で話題になったツールがあります。 Bootstrapのパーツをドラッグ&ドロップで並べてレスポンシブサイトを作る「Jetstrap」。 いま調べたら、ドメインごと消えていました。跡形もありません。

だからこの記事は「どれがいいか」ではなく「どう選べば後悔しないか」を書きます。 結論を先に言うと、見るべきは機能ではなく「出口」です。

先に結論

「先に結論」の内容を図にまとめたもの
よく語られる選び方この記事の提案
テンプレートの数作ったものを持ち出せるか
操作のしやすさサービスが終わったとき何が残るか
月額料金やめるときのコスト
SEO機能の有無独自ドメインを自分で握れるか

ノーコードツールは「借りている」ものです。 月額を払っている間だけ、相手のサーバーの上でサイトが動きます。 相手がやめたら、こちらは何もできません。

これは理屈ではなく、実際に起きたことです。次の章で実測を出します。

2013年に話題だったツールは、消滅していた

「2013年に話題だったツールは、消滅していた」の内容を図にまとめたもの

Jetstrap に何が起きたか

Jetstrapは、Bootstrapのボタンやグリッドを画面上でドラッグ&ドロップして並べるだけでレスポンシブなページが組めるサービスでした。 当時はBootstrapが広まりきった直後で、「デザインに時間をかけたくないエンジニア」に刺さる道具だった記憶があります。

そのJetstrapが、いまどうなっているか調べました。

調べたこと結果(2026年10月25日時点)
HTTPでアクセス接続できない(http / https / www すべて)
DNSのAレコード無し
ネームサーバー無し
Wayback の最後の実体2018年(約8,700バイトの通常ページ)
2023〜2024年のスナップショット595〜730バイト=中身のないページ

サービスが終わっただけでなく、ドメインそのものが手放されています。 2018年あたりまでは動いていて、そこから中身が無くなり、いまは名前解決すらできません。

当時Jetstrapでサイトを作っていた人は、どこかの時点で全部作り直しています。 エクスポートできていれば手元にHTMLが残りますが、 サービス内に閉じていたら、残ったのはスクリーンショットだけです。

これは珍しいことではない

Jetstrapが特別に運が悪かったわけではありません。この手のサービスは普通に終わります。

終わり方利用者に起きること
サービス終了猶予期間内に全部持ち出す必要がある。気づかないと消える
買収されて方針転換プランが変わる・値上げ・機能廃止
無料プランの廃止払うか、出ていくかの二択になる
静かな開発停止動いてはいるが、新しいブラウザや規格に追従しなくなる

「大手だから大丈夫」も保証にはなりません。 大きな会社ほど、採算の合わないサービスを淡々とたたみます。

だからといって使うなという話ではありません。 ノーコードツールは実際に速いし、費用も安い。 終わる前提で選べばいいというだけです。その基準が次の章です。

だから「出口」で選ぶ

「だから「出口」で選ぶ」の内容を図にまとめたもの

出口とは何か

そのツールをやめるとき、何を持って出られるかです。

持ち出したいもの確認すること
独自ドメイン自分の名義で取っているか。ツール側で取得すると移管が要る
ページのHTML / CSSエクスポート機能があるか
画像・動画一括ダウンロードできるか
記事・商品などのデータCSVなどで出せるか
フォームの送信履歴出せるか。出せないサービスは多い
URLの構造移行先で同じURLを再現できるか(できないと検索流入が消える)

一番効くのは独自ドメインです。 ドメインさえ自分で握っていれば、中身を作り直してでもURLと検索評価を引き継げます。 逆に example.サービス名.com のような借りたURLで育てると、 引っ越した瞬間にゼロからやり直しになります。

独自ドメインの考え方は レンタルサーバーおすすめ8選 にも書きました。

出口の3段階

ツールは、出口の広さで3つに分かれます。

段階できることサービスが終わったら
① 静的ファイルを書き出せるHTML/CSS/画像を落として、自分のサーバーに置けるそのまま生き残る
② データは出せるが、見た目は出せない記事や商品はCSVで出せる。デザインは作り直し中身は残る。作り直しは必要
③ サービス内に閉じている画面のコピーと手作業での書き写しのみほぼ全損

比較記事はここをほとんど書きません。 テンプレート数や月額は書いてあっても、「やめるときどうなるか」は書いていない。 売る側が書くはずのない情報だからです。

ベンダー自身の記載を読む

各社の公式ヘルプを読むと、出口の狭さが分かることがあります。 たとえばWixの公式サポートには、こういう記載があります。

現在、すべてのメディアファイルを一度に一括ダウンロードすることはできません。 ただし、フォルダ内で複数のファイルを選択してダウンロードすることは可能です。

画像を全部まとめて落とせないということです。 数十枚なら手作業で済みますが、数百枚あるサイトでは現実的ではありません。

デザインの持ち出しについても、公式にこうあります。

Figma から Wix Studio エディタにフレームとスタイルをエクスポートすることは可能ですが、 これの逆を行うことはできません。

入口は広く、出口は狭い。これがノーコードツールの基本構造です。 責めているのではなく、ビジネスとして当然そうなるという話です。 選ぶ側が、契約する前にヘルプの「エクスポート」を検索しておけば済みます。

目的別に、どれを選ぶか

「目的別に、どれを選ぶか」の内容を図にまとめたもの

出口の観点を踏まえたうえで、用途ごとの現実的な選択肢を整理します。

作りたいもの向いている方法出口
1枚のLP・告知ページノーコードビルダー狭くても困らない(作り直しが軽い)
店舗・会社の紹介サイトノーコードビルダー+独自ドメインドメインだけは自分で握る
記事を積むメディアWordPress広い(データもファイルも自分のもの)
自分で手を入れたいCSSフレームワーク+静的サイト最も広い
Webアプリ(ログイン・DB)ノーコード開発ツール or 自作要確認。ロックインが強い

記事を積むなら、ノーコードビルダーは勧めません。 100本書いたあとにサービスが終わったとき、失うものが大きすぎます。 記事という資産を貯めるつもりなら、自分のサーバーにWordPressか静的サイトを置くほうが結果的に安くつきます。

置き場所の選び方は レンタルサーバーおすすめ8選 にまとめました。

主要ツールを「出口」で並べる

「主要ツールを「出口」で並べる」の内容を図にまとめたもの

よく名前の挙がるツールを、この記事の軸(出口の広さ)で整理します。 機能やテンプレート数の比較は他の記事に山ほどあるので、ここでは扱いません。

出口の列は「自分で確認してください」という意味です。 仕様は変わりますし、プランによっても変わります。 この記事で公式の記載まで確認できたものだけ、はっきり書いています。 それ以外は検索する語を添えたので、契約前にヘルプで引いてください。

サイトビルダー系

ツールよく使われる用途出口について確認すること
Wix汎用。テンプレートが多い公式に「すべてのメディアファイルを一度に一括ダウンロードすることはできません」と記載あり。画像が多いサイトは要注意
Wix Studio制作会社・企業向け公式に「Figma から Wix Studio へのエクスポートは可能だが、逆はできない」と記載あり
STUDIOデザイン自由度の高いサイトヘルプで「エクスポート」「移行」を検索
ペライチ1枚のLP・告知ページ作り直しが軽いので出口の優先度は低い。独自ドメインの扱いだけ確認
Jimdo小規模サイトを最短でヘルプで「エクスポート」「解約」を検索
Google Sites無料・社内向けGoogleアカウントに紐づく。独自ドメインの可否を確認
Canva1ページを即公開デザインツールの延長。長期運用には向かない前提で

記事を積むなら

方法出口必要なもの
WordPress広い。記事も画像も自分のサーバーの中にあるレンタルサーバー(月400円台〜)
静的HTML最も広い。ファイルがすべてレンタルサーバー+自分で書く手間
ビルダーのブログ機能狭いことが多い。記事データの出力可否を要確認月額のみ

記事を100本積んだあとで引っ越すのは、想像よりずっと重い作業です。 本文が出せても、画像・URL・内部リンクがついてきません。 最初から自分のサーバーに置いておけば、この作業自体が発生しません。

Webアプリを作るなら

種類性質出口
ノーコード開発ツール(Bubble等)DB・ログイン・ワークフローまで作れる最も狭い。ロジックごとツールに閉じる
自分で実装時間がかかるすべて手元

アプリ系のノーコードは、サイト系よりロックインが強いと考えてください。 サイトなら最悪HTMLを書き直せば済みますが、 データ構造と処理の流れがツール固有の形で表現されているものは移せません。 事業の中核をここに置くかどうかは、慎重に判断してください。

出口の段階で分類すると

段階該当するもの向いている使い方
① 静的ファイルが手元に残る静的HTML、CSSフレームワーク、AIに書かせたコード長く運用するもの全般
② データは出せるWordPress、ECや予約などCSV出力があるサービス記事・商品を積むサイト
③ サービス内に閉じる多くのサイトビルダー、ノーコード開発ツール短期・使い捨て・作り直しが軽いもの

③が悪いわけではありません。 LPを1枚作って3ヶ月回すだけなら、③で十分どころか最適です。 問題は、③のツールで何年も資産を積んでしまうことです。

エンジニアならどう選ぶか

「エンジニアならどう選ぶか」の内容を図にまとめたもの

2013年の記事の動機は「デザインしたくない。コーディングの時間を削りたい」でした。 その目的なら、いまはノーコードビルダーが最適解とは限りません。

CSSフレームワークという選択肢

Jetstrapが解こうとしていた問題(Bootstrapを手で書くのが面倒)は、 そもそもフレームワーク側が進化して小さくなりました。

やり方デザインの手間出口
CSSを自分で全部書く大きい完全に自分のもの
CSSフレームワークを使う小さい完全に自分のもの
ノーコードビルダー最小ツール次第

HTMLとCSSが書けるなら、フレームワークを使うのが一番ロックインが無いという結論になります。 出来上がるのはただのHTMLとCSSなので、どこにでも置けます。

AIに作らせるという選択肢

2013年には無かった選択肢です。見た目をAIに作らせて、出てきたコードを自分で持つ。

ノーコードビルダーAIに書かせる
作るものサービス上のサイトHTML / CSS のファイル
出口ツール次第最初から手元にある
サービスが終わったら影響を受ける何も起きない(ファイルは手元)
細かい調整GUIの範囲内コードを直せば何でも
必要なスキルほぼ不要読んで直せる程度は必要
置き場所サービスが用意自分で用意する

「コードを読んで直せる人」にとっては、AIに書かせるほうが出口が広い。 出てくるのはただのファイルなので、どのサーバーにも置けるし、誰のサービスにも依存しません。

このサイト自体が静的HTMLを手で置いているだけです。ビルダーは使っていません。

逆に、コードが読めないならAIに書かせないほうがいいとも言えます。 出てきたものが正しいか判断できないまま公開すると、直せない状態で動き続けます。 その場合は素直にノーコードビルダーを使って、ドメインだけ自分で握るのが現実的です。

乗り換えるときに持ち出せないもの

「乗り換えるときに持ち出せないもの」の内容を図にまとめたもの

実際に移るとなったとき、見落としやすいものを挙げます。 ページのHTMLばかり気にして、こちらを忘れます。

忘れやすいもの失うと何が起きるか
フォームの送信履歴問い合わせ内容が消える。顧客リストが消えることもある
独自ドメインのメールツール付属のメールは解約と同時に止まる
URLの構造再現できないと検索流入が全部切れる
アクセス解析の履歴サービス内蔵の解析は持ち出せないことが多い
予約・在庫などの業務データCSVで出せるか要確認
SSL証明書移行先で取り直し。切り替えのタイミングで一時的に警告が出ることがある

順番を間違えないでください。 先に解約すると、データを取り出す画面にログインできなくなります。 移行は「新しい場所を用意 → 中身を移す → 表示を確認 → ドメインを向け直す → 最後に解約」です。

同じ順番の話を シンレンタルサーバーの解約 にも書きました。 サービスをやめるときの手順は、相手が何であれ同じです。

契約する前に確認すること

「契約する前に確認すること」の内容を図にまとめたもの

無料プランで触る前に、ヘルプセンターを5分読んでください。

  1. ヘルプで「エクスポート」を検索する
    何が出せて何が出せないかが、だいたい分かります。 「できません」と書いてある項目こそ重要です。
  2. 独自ドメインの扱いを確認する
    自分で取ったドメインを使えるか。ツール側で取得した場合に移管できるか。 ここが塞がっていると、やめたときに全部ゼロになります。
  3. 解約後にデータがいつまで残るか調べる
    猶予期間を過ぎると消えます。「解約」「削除」で検索してください。
  4. 無料プランで1ページ作って、落とせるか試す
    本番を作る前に、出口を実際に通ってみる。これが一番確実です。

4番をやる人はほとんどいませんが、一番効きます。 「エクスポートできます」と書いてあっても、 出てきたファイルがそのまま動くとは限りません。 画像のパスが絶対URLのままだったり、JavaScriptがサービス側のAPIを呼んでいたりします。

AIでやるなら

「AIでやるなら」の内容を図にまとめたもの

ツール選びも、サイト作りそのものも、AIに投げられます。 ただ投げ方を間違えると「おすすめ12選」を読み上げられるだけになります。

ツールを選ばせるプロンプト

おすすめを聞かないでください。AIの知識は古く、 終わったサービスを勧めてくることがあります。Jetstrapのようなケースです。

プロンプト

ノーコードのサイト作成ツールを選びます。
おすすめのサービス名は挙げなくていいです。

【条件】
- 作るもの:(LP / 会社サイト / 記事を積むメディア など)
- 自分のスキル:(HTMLが読める/読めない)
- 続ける期間:(数ヶ月 / 数年)

【やってほしいこと】
1. この条件で「出口の広さ」をどこまで重視すべきか判断して
2. 契約前にヘルプで確認すべき項目を、検索する語とセットで挙げて
3. 私の条件では気にしなくていい項目を「無視していい」と言い切って

サービス名と料金は自分で調べます。判断の軸だけ整理してください。

「サービス名と料金は挙げなくていい」と先に書くのがコツです。 ここを開けておくと、学習時点の古い情報で具体名と価格を並べ始めます。 料金は最も変わりやすく、サービスは終わることもある。 名前と金額は自分で公式を見てください。

作らせるときのプロンプト

AIに見た目を作らせるなら、出口を最初から確保する指示を入れます。

プロンプト

1枚のランディングページを作ってください。

【必ず守ること】
- 外部サービスに依存しない。CDNのCSS/JSも使わない
- 画像はプレースホルダのままにして、後から差し替えられるようにする
- スマホ幅(375px)で横スクロールが出ないこと
- 1ファイルで完結させる(後から分割する)

【書かないでほしいこと】
- 特定のサービスのアカウントが必要になる仕組み
- ビルドツールが必要な書き方

最後に、このページを自分のサーバーに置くときの手順を3行で書いてください。

「外部サービスに依存しない」が出口そのものです。 CDNを1本読み込むだけでも、そのCDNが止まれば見た目が崩れます。 ファイルを手元に全部持っていれば、置き場所を変えても何も起きません。

出てきたものの検証

見るところNGなら何が起きるか
外部URLを読み込んでいないか相手が止まると崩れる
画像が絶対URLになっていないか移したときに画像だけ出ない
375px幅で横スクロールが出ないかスマホで見づらい
存在しないサービスを前提にしていないかそもそも動かない

検証はファイルをダブルクリックしてブラウザで開くだけで9割できます。 サーバーに上げる前に、ローカルで開いて崩れないかを見てください。 ここで崩れるなら、外部に依存しています。

よくある質問

結局どのツールがいいですか
作るものによります。1枚のLPならノーコードビルダーで十分です。記事を積むなら勧めません(失うものが大きい)。HTMLが読めるなら、AIに書かせて自分のサーバーに置くのが一番ロックインがありません。
ノーコードツールは危ないということですか
違います。速くて安いので、使う価値はあります。危ないのは出口を確認せずに本番を作り込むことです。最低限、独自ドメインだけは自分の名義で取ってください。
大手のサービスなら安心では
保証にはなりません。大きな会社ほど、採算の合わないサービスを淡々とたたみます。規模ではなく「終わったとき何が残るか」で判断してください。
エクスポートできると書いてあれば大丈夫ですか
試してから信じてください。出てきたファイルの画像パスが絶対URLのままだったり、JavaScriptがサービス側のAPIを呼んでいたりします。無料プランで1ページ作って、実際に落として開いてみるのが確実です。
すでにビルダーで作り込んでしまいました
まず独自ドメインの名義を確認してください。自分のものなら、最悪作り直してもURLと検索評価は引き継げます。次にフォームの送信履歴など、消えると困るデータを今のうちに落としておいてください。
2013年ごろのツールが消えたのは特別な例では
特別ではありません。サービス終了・買収後の方針転換・無料プラン廃止・静かな開発停止。終わり方はいくつもあります。終わらない前提で設計しないことが要点です。

まとめ

2013年に話題だったツールは、いまドメインごと消えています。調べれば数分で分かることです。

  1. ツールは終わる。
    サービス終了、買収、無料プラン廃止、静かな開発停止。終わらない前提で作り込まないでください。
  2. 見るのは機能ではなく「出口」。
    やめるときに何を持って出られるか。契約前にヘルプで「エクスポート」を検索するだけで、だいたい分かります。
  3. 独自ドメインだけは自分で握る。
    ドメインが自分のものなら、中身を作り直してでもURLと検索評価は引き継げます。

便利なツールを使うのは良いことです。ただ、それに自分の資産を預けきらないでください。 10年経ってから分かることがあります。

自分のサーバーに置く話は レンタルサーバーおすすめ8選、 やめるときの手順は シンレンタルサーバーの解約 に書きました。 古いツールが今も勧められ続けているという同じ型の話は PHPでOGPを取得する にもあります。

Jetstrapの状況は2026年10月25日時点で、DNS・HTTP・Wayback Machineを自分で確認したものです。 各サービスの仕様は変わります。契約する前に、必ず公式のヘルプで最新の内容を確認してください。